Haiku 赤き月 赤き月 市川綿帽子 籐椅子や腹水日ごと膨れゆき 病む母の熟睡の間や缶ビール 巻爪の一趾一趾を拭く溽暑 点滴のてのひら握る西日中 賽の目の西瓜一匙づつ唇へ 大群の鴉や処暑の家を囲む 刻刻と冷えゆく頬に死化粧 風きよら月赤赤と腫れてをり 秋気満つ荼毘の扉の閉ぢられて かりがねや港に来れば錆いろいろ 秋しぐれ砂利の二山煌めかす 夜永さに看取りし日誌よみかへす 雑念を削ぎたし大根洗ふべし 大寒や天一面の星は糞 CITIZENの形見瞬く冬青空