Haiku

赤き月

赤き月

            市川綿帽子

籐椅子や腹水日ごと膨れゆき

病む母の熟睡の間や缶ビール

巻爪の一趾一趾を拭く溽暑

点滴のてのひら握る西日中

賽の目の西瓜一匙づつ唇へ

大群の鴉や処暑の家を囲む

刻刻と冷えゆく頬に死化粧

風きよら月赤赤と腫れてをり

秋気満つ荼毘の扉の閉ぢられて

かりがねや港に来れば錆いろいろ

秋しぐれ砂利の二山煌めかす

夜永さに看取りし日誌よみかへす

雑念を削ぎたし大根洗ふべし

大寒や天一面の星は糞

CITIZENの形見瞬く冬青空

一日

2022年12月24日

梅雨

2023年6月22日